彼岸

物語を読んでいても、
そのすべてが終わった後のことばかりを考える。
いつか必ず途切れるページの、向こう側。


幸せも哀しみも、もう書かれて綴じられた本の中にしかない。
あれは幸せだったのだと、
これは哀しみだったのだと、
そう知ることができるのは、
全部終わったあとだけなんだと、
僕はきみから教わったんだよ。



ああ、昨日の月はきれいだったなあ。

1/7305

下り坂。とてもゆるやかな。
それでも確実に、気がつけば小さな段差を落ちていて、あの日わずかに見えた景色がもう見えない。
時の流れはそんなもの。
きっと少しずつ進んではいて、気がつけば背が伸びていたあの頃のように、目指した高さに近づいてはいて。
だけど、残酷なほど透明な、無意味に過ぎる一日の長さに、
短さに、
この歩幅が勝てたためしがあっただろうか。


時の流れはそんなもの。