痛覚経路

届かない手も足りない歩幅も
下手を誤魔化すのが下手な自分も
誰の意味にもなれないことも誰にも覗いてもらえないことも
大嫌いで
それを全部まとめてなぞった昨日が
途方もない激痛で僕を殺そうとするから
目をつむって消し去ろうとしたけれど
悪夢と妄想と理想と現実がひとつの幻覚になって
痺れきった脳裏を荒らし尽くして
感情がおかしくなってくだけだった


すこしずつ慎重に距離を縮めてたはずの憧れ
眩しくて眩しくて眩しくてもう二度と見たくなくなってた




時間は残酷なので
なにひとつ忘れさせてはくれないから
無惨に整理された今日の景色には
焼きついてた憧れがちゃんとあった


それはあまりにも僕と無関係に輝くから
あんなに痛かったのがすこしだけ馬鹿らしくなって



こんな姿だとしても
結局やめるわけになんていかないから
相変わらずな今日に最悪な昨日をていねいに写して
奇跡なんて願いながら、どうせ起きないよと思いながら、
この手と歩幅がわずかでも伸びるように
記憶ごと明日まで引きずっていくよ




どうせまたすぐに崩れ去ってしまうのだとしても
そうしてまた何千回と昨日を繰り返すのだとしても
そんな脆さと痛みこそ僕の希望だって呼んだなら
きっとまだもうすこしだけ歩けるから。